3LC(サンエルシー)株式会社の潤です。
今日は、「AIエージェント」という言葉について書いてみました。
私は普段、AIを使って文章を作ったり、業務システムを開発したり、毎日の仕事を楽にする仕組みを考えたりしています。
その中で、気になるようになったのが「AIエージェント」という言葉です。
AIが質問に答える。文章を作る。情報を調べる。そして、実際の仕事を進める。AIを使った仕組みにもいろいろありますが、どこからが「エージェント」なのか。私自身、改めて整理しておきたいと思いました。
「それ、本当にAIエージェントなんですか?」
少し強い言い方ですが、誰かのサービスを批判したいわけではありません。これは、自分が作ろうとしている仕組みにも向けた問いです。
AIエージェントと聞くと、何となく、自分で考えて仕事を進めてくれそうな気がします。でも、そう呼ぶなら、何を判断し、どこまで実行するのかも説明できないといけない。
便利そうな名前を付ける前に、その中身をちゃんと理解しておきたい。
今回は、AIを使って仕事の仕組みを考えている立場から、この言葉との付き合い方を書いてみます。
そもそも、
AIエージェントって何なんだろう?
私が違いを理解する手がかりになったのは、仕事の進め方を、どこまでAIが選ぶのかという視点です。
例えばAnthropicは、あらかじめ決めた手順に沿ってAIやツールを動かす「ワークフロー」と、AIが状況に応じて手順やツールの使い方を選ぶ「エージェント」を区別しています。呼び方には幅がありますが、仕組みを理解するための区別です。
OpenAIも、単にAIを組み込むだけではなく、AIが仕事の進行を管理し、状況に合わせて使うツールを選ぶことを、エージェントの特徴として説明しています。
私なりに整理すると、「文章を作ってくれるか」だけではなく、「次に何をするかまで、どこをAIに任せているか」を見る、ということです。
ただし、会話形式だからエージェントではない、という話でもありません。チャットの裏側で、AIが必要な情報を取得したり、操作を選んだりする仕組みもあります。画面の見た目だけでは区別できません。
名前や見た目より、実際の動き方を見た方が、私には分かりやすいと感じました。
「自動で動く」と
「進め方を判断する」は違う
例えば、私が取り組んでいるInstagramストーリーの自動投稿を題材に、仕組みの違いを考えてみます。
ここからは比較のための例で、すべてが実装済みという話ではありません。
まず、毎日17時に、あらかじめ用意した画像を投稿する。これは、決めた時間に決めた処理をする自動化として考えられます。
次に、毎日17時にAIが文章を作り、その文章を決められた手順で投稿する。この場合はAIを使っていますが、仕事全体の流れは、あらかじめ決まっています。
では、「その日の営業情報を確認して、必要な案内を準備する」という目的を渡す場合はどうでしょうか。
AIが足りない情報を判断して確認先を選び、確認できた内容に応じて次の作業を変える。必要なら人に質問し、結果を確かめながら進める。そうした設計なら、先ほどのエージェントの説明に近づきます。
ただし、営業時間を確認したり、条件によって投稿を止めたりするだけなら、決められたルールでも実現できます。条件分岐があることや、途中でAIが判定することだけで、エージェントと決まるわけではありません。
私が見たいのは、作業が何個あるかではなく、その進め方を誰が決めているのかです。
そして、もう一つ大切なのが、投稿まで自動で実行するのか、準備したものを人が確認するのか。この二つも、分けて考えたいと思っています。
AIができることと、
任せていいことは違う
自分たちで運営しているメンズ専用眉毛サロン「眉ダンディズム」でも、AIやシステムを使って、日々の業務をもっと楽にできないかと考えています。
予約の確認、お客様への連絡、売上管理、SNS、情報共有。見直したい仕事はいろいろあります。
ただ、こうした業務を考えるとき、全部を同じようにAIへ渡すわけにはいきません。
例えば、お客様からの問い合わせを整理して、返信案を作る。それと、その文章を実際に送信することは別です。
予約情報を確認することと、予約を変更することも違います。変更まで任せるなら、お客様や店舗の予定に影響します。
ここで考えたいのは、技術的にできるかどうかだけではありません。
AIができることと、AIに任せていいことは違う。
どの情報を見せるのか。何を提案してもらうのか。どの操作まで許可するのか。そこを決めてから、仕事を渡したいと思っています。
人間に確認することも、
仕組みの一部
AIエージェントという言葉から、「人間が一切確認しなくても、全部やってくれるもの」を想像しそうになります。
でも、人への確認が入ることと、エージェントであることは矛盾しません。OpenAIのガイドでも、処理を続けられない場合や、取り消しにくい重要な操作などでは、人が介入できる設計を勧めています。
私も、確認をなくすことだけを目標にしたくありません。
例えば、返信案はAIが作り、送信は人が確認する。予約変更の候補はAIが整理し、実際の変更は承認後に行う。
これは、中途半端な自動化というより、私なら、安心して任せるための役割分担として考えます。
「勝手に送らないで」と伝えるだけでなく、承認がないと送信できない仕組みにしておく。止まったときに誰が確認するのかも決めておきたい。実行前の承認を仕組みに組み込む方法は、OpenAIの安全設計の案内でも示されています。
どこまで自動で進めるかだけでなく、どこで止まるかも決める。
それも、仕事を任せられる仕組みを作るうえで、大切なことだと思っています。
AIエージェントじゃなくても、
いいんじゃない?
ここまで考えて、もう一つ思ったことがあります。
そもそも、その仕事にAIエージェントが必要なのか。
例えば、決まった曜日に、決まった案内を出したいだけなら、そのためのシンプルな自動化で足りるかもしれません。毎回AIに進め方を考えさせる必要があるのかは、別の話です。
OpenAIのガイドでも、状況に応じた複雑な判断などが必要かを確認し、そうでなければ、決まったルールで動く仕組みで十分な場合があるとしています。
私は、この考え方がしっくりきます。
「AIエージェント」という名前を付けたいから、わざわざ複雑な仕組みを作る。それでは、何のために作っているのか分からなくなります。
普通の自動化で解決できるなら、それでいい。
AIが必要なところにはAIを使う。決められたルールで十分なところは、そのまま動かす。人が判断した方がいいところは、人が判断する。
私は、技術の名前から仕事を考えるのではなく、任せたい仕事から仕組みを選びたいと思っています。
「AIエージェントです」より、
「ここまで任せられます」
これは、3LCがお客様にAIを使った仕組みを提案するときにも、大切にしたいことです。
「最新のAIエージェントです」と聞けば、便利そうに感じるかもしれません。
でも、私が使う側なら、その名前だけでは判断できません。
何をしてくれるのか。どこまで自動で進むのか。何は自分で確認しないといけないのか。
必要な情報がそろわないときはどうするのか。間違えたときは誰が対応するのか。費用や運用の手間は、どれくらいかかるのか。
そして、今の仕事がどう変わるのか。
そこまで知って、初めて使うかどうかを考えられます。
だから私は、「この仕事を、ここまで任せられる仕組みです」と説明できるようにしたい。
返信案を作るところまでなのか、承認後の送信まで含むのか。情報を整理するのか、業務データの更新まで行うのか。
任せられることと、任せられないことを、具体的に伝える。
AIエージェントという言葉を使うなら、その中身も説明する。決められた処理を自動化する仕組みなら、そう説明する。
名前を大きく見せることより、その方が、お客様も判断しやすいと思います。
仕組みができた。
その後、仕事はどう変わった?
私自身、新しい技術や使い方を知ると、試したくなります。
「これ、うちの仕事にも使えそうやな」と考えて、形にしてみる。その面白さは、これからも大事にしたいです。
ただ、仕組みができたところで、満足しないようにしたいとも思っています。
AIが複数の作業を進められるようになった。いろいろなツールを操作できるようになった。それだけでは、仕事が良くなったかどうかは分かりません。
自分でやっていた作業は減ったのか。確認や修正の手間まで含めて、楽になっているのか。使う人が、迷わず使えているのか。
そこを見たいと思っています。
もし、任せた仕事を毎回細かく追いかけなければいけないなら、渡し方や仕組みを見直したい。反対に、地味な自動化でも、毎日の一つの作業を確実に減らせるなら、私には十分価値があります。
すごい仕組みを作ることと、役に立つ仕組みを作ることは違う。
AIエージェントという言葉を考えていたはずなのに、結局、いつもの仕事づくりの話に戻ってきました。
それ、本当に
AIエージェントなんですか?
最初は、AIエージェントという言葉の使い方が気になっただけでした。
でも、考えていくと、私が確かめたかったのは、名前の正しさだけではなかったのだと思います。
そのAIは、何を判断するのか。どこまで実行できるのか。どこで人が確認するのか。そして、それによって仕事がどう変わるのか。
そこを理解したうえで、使いたいし、提案したい。
だから、このタイトルは、誰かに向けた批判ではありません。自分が作るものを、自分でちゃんと説明できるかという問いでもあります。
AIエージェントを作ることが目的ではない。
仕事を任せられる仕組みを作りたい。
必要ならAIエージェントを使う。普通の自動化で十分なら、それでいい。AIを使わなくても解決するなら、無理に使わない。
技術の名前は正しく使う。そのうえで、何を任せられるのかを、具体的に伝える。
3LCでは、そんな姿勢で、AIを使った仕事の仕組みを考えていきたいと思っています。
